• Jリーグ21年の歴史の中で、1993-1994年のヴェルディ川崎、2000-2001年の鹿島アントラーズ、2003-2004年の横浜F・マリノス、2007-2009年の鹿島アントラーズに続いて、サンフレッチェ広島が、2012-2013年と連覇を飾った。サンフレッチェ広島のキャプテンであり、エースストライカーである佐藤寿人選手の言葉の中に、連覇の要因を探した。



優勝争いを繰り広げ、得点を重ね続けることは、DFのマークが厳しくなることを意味する。しかしながら、佐藤寿人選手は2年連続でフェアプレー個人賞を受賞。それどころか、佐藤選手は実に、丸4年以上にわたって、J1リーグ戦でイエローカードをもらっていない。そのフェアプレースピリットは、チームにも広がっており、チームも2年連続で警告数がリーグ最少を記録。サンフレッチェ広島もまた2年連続でフェアプレーチーム賞を受賞している。

「特別イエローカードをもらわないようにしてるわけじゃないんですけどね。考え方が大事だと思うんです。例えば、対戦相手を敵だと思うとマイナスの気持ちが出てしまうと思うんです。怒りだったり、憎しみだったりというネガティブな感情が生まれて、ラフプレーにもつながってしまいます。でも、同じサッカーを愛する仲間だとリスペクトすれば、フェアプレー精神でプレーできるのではないかと思っています。僕自身、カズさん(三浦知良/横浜FC)やゴンさん(中山雅史)の影響で、常にフェアな形でゴールを決めたいと思うようになりました」

2013年のフェアプレー個人賞は佐藤選手の他、セレッソ大阪の柿谷曜一朗選手も同時受賞した。「Jリーグアウォーズの舞台で僕の前にスピーチをした柿谷選手が、僕がフェアプレー個人賞を2012年にとった姿を見て、『自分も欲しいと思って無駄なラフプレーしないように心がけた』とスピーチで言ってくれて。正直あの時はビックリして『本当かよ』って思ったんですけど、その後曜一朗と話をしたら『本当にこの賞欲しかったんで』って言ってくれたんですよね。そういう自分の考え方やプレーを、同じJでプレーしてる若い選手が見て、変えていってくれる。なおかつストライカーとしてゴールを残した上での、フェアプレー個人賞を受賞した柿谷選手を見て嬉しかったですし、そういった思いや考え方っていうのを、普段Jリーグを見てくれている多くの子ども達にもこれから伝えていけると思いますし、僕自身も下の世代に対してそう伝えていけるような背中でありたいなと思います。


インタビュー後、色紙にサインと連覇への思いを書いてもらうようにリクエストすると、迷いながら、「何がいいかな。でも『連覇達成』とか書くと、これで終わっちゃったみたいで嫌なんですよね」と連覇を喜びながらも、既にその次に目が向けられていた。身長170cmとFWとしては小柄ながらも、常に課題を探し続け、どうプレーしていけば自分が生きるのか、相手が嫌がるのかを考え続けることで、10年連続二桁得点、J1で134点、J2で50点という実績を残してきた佐藤寿人選手。2013年、チームとしての課題は「夏場にあった」と言います。第21節(8/17)の名古屋戦、ロスタイムで同点に追いつかれ、翌22節大分戦(8/24)もドロー。その後3連敗を喫し、1ヶ月余りの間、勝ち星から遠ざかった。

「夏場5試合勝ちから見放されて。ホームの名古屋戦でロスタイムまで1-0で勝っていて最後のプレーで追いつかれたり、アウェイの大分戦でも残り短い時間で追いつかれたり。その時にもう少し何かできたんじゃないか、とは思いますね。あとは、レッズとマリノスとの直接対決で2敗。これは非常に悔しくて。『しっかりしろ』と自分に言葉をかけたいです」。連覇を達成しながらも「やっぱり、まだ満足はできないですよね」と言う寿人選手。「圧倒して勝ちたいって思いがあるので。優勝しても、フォワードは満足したらそこで終わりなんで。もっともっと上手くなりたいですし、もっともっと強いチームになりたいですね。自分自身を危険な選手に、ゲームを決められる選手になっていきたい。あとは、連覇したことで自分たちには3連覇のチャンスがあります。2013年にできなかったこと、足りなかったことを2014年にしっかり埋めていく上で結果を出せば、3連覇も見えてくると思います。これからのJリーグの歴史の中で、『あの時がサンフレッチェの黄金期だった』と言われるような結果を残したいですね。サンフレッチェの黄金期を作っていきたい、サンフレッチェを地元に必要とされるクラブにしていきたい、と強く思います」

2014年シーズン、Jリーグは3/1(土)にスタート。さらに、2013年は勝ち星を上げることのできなかったACLの舞台が再び待ち受けている。「サポーターには、アジアで戦う姿を見て欲しいですし、背中を押して欲しいなっていう気持ちがあります。あとは本当に感謝の気持ちです。そして一緒になって連覇っていうタイトルを勝ち取ってくれた仲間におめでとうという言葉をかけてあげたいです」