紙芝居屋のガンチャンが、アンプティサッカーを題材に、オリジナル紙芝居を作成。全国少年サッカー大会「ラモスカップ公認第20回ウジョンカップ2019」（8月20-21日）で、子どもたちにくじけずに夢を追う姿を伝えた。主人公は関西セッチエストレーラスの近藤碧選手。小6で事故により左足を切断し、今はアンプティサッカーW杯で世界を目指す。
観客との掛け合い紙芝居
今までもウジョンカップでは、試合の合間に紙芝居を行っていたガンチャンだが、今年は20回大会ということもあり、アンプティサッカーの近藤碧選手（あお君）をモデルにオリジナルの紙芝居を作ってほしいと依頼されたという。「普段まじめな紙芝居はしないんですけどね」と話すように、演じる紙芝居は漫才にも近いお笑いである。子どもや大人も興味を持つ昔話やアニメを題材にしながら、途中でクイズがあったり、正解するとオリジナルのシールをもらえたり、見ている子どもを主人公にしたりと、観客との掛け合いで、話が広がり、笑いが膨らむコミュニケーション型の紙芝居だ。
大会二日目の取材だったため、子どもたちもガンチャンになじんでいて、「紙芝居屋さんこっち来てー」と猛アピール。ガンチャンは、ひとつひとつ丁寧に応え、荷台に紙芝居枠を設置したバイクを押して子どもたちのもとに。中には、「子どもらの反応が薄いんで来てください」という監督からのリクエストも。「関東から来ていて、試合だけだともったいない。大阪弁だけでも面白いんで、アンプティもそうですけど、子どもたちに体験してほしくて」と語る。
シリアスな紙芝居
小1でサッカーをはじめたあお君は、Jリーガーになる夢を試合に向かう途中の交通事故で失った。小学6年生だったあお君は、病床で「またみんなとサッカーがしたい」と語ったという。ガンチャンは、「あお君のことを調べるうちに、かっこええなーと思って」と話す。ウジョンカップのグラウンドの脇で、子どもたちに向かって、「ほな、最後まじめなやつしよか」と取り出したあお君の紙芝居。掛け合いは変わらずだが、その言葉はいつになくシリアスになる。
「あおくん、事故で左足なくなった後に、先生に『またサッカーができますか？』って聞いてんて」。「松葉杖をつきながら一緒にサッカーをしてんけど、みんなが気を使ってプレーするのがイヤやってんて。中途半端なやつや」。「アンプティサッカーを教えてもろて、めっちゃ激しい、サッカーやんってのめりこんで、15才で日本代表になってん」。「好きなものや夢があれば、大変なことがあっても前を向いていける。みんなも好きなこと大事にしてな。この後の試合もがんばりや」と紙芝居を進めながら、熱いメッセージを付け加えていった。
11/2-3は川崎でアンプティサッカー日本選手権
あお君が、「すごく絵が上手くて、細かいところまで再現してくれてるなと思いました」と語った紙芝居だが、ガンチャンは最初、「お涙ちょうだいなのかな、と思った」という。でも、「あお君がすごくって。あお君自身は普通に好きなことをしてるだけ。でもそれだけで力をもらえるし、真剣に打ち込むってことがすごいこと。それが見てる子どもたちに伝わってたらいいな、と思います」と笑った。
今回は小学生対象で行われた紙芝居だったが、あお君はアンプティサッカーがより広がっていくために、「同年代や年上の人たちにも知ってもらいたい」と語る。そのアンプティサッカーの日本選手権が、11月2-3日に神奈川県川崎市で行われる。あお君の所属する関西セッチエストレーラスは、初日、二日目とも富士通スタジアム川崎で試合を行う。昨年の日本選手権は3位、今春のレオピン杯では準優勝と、あと一歩。「日本選手権は優勝したいです！僕はドリブルが得意なのでドリブルを見てもらえると嬉しいです」。
アンプティサッカー
30年以上前にアメリカの負傷兵が松葉杖をついてプレーするサッカーを、リハビリテーションとして始めたのが競技のきっかけ。フィールドプレイヤーは下肢の切断者で、日常生活でも使われる松葉杖（ロフストランド・クラッチ）をついてプレーし、GKは主に上肢を切断しており、片腕でプレー。フィールドプレイヤー6名とGK1名の7人制サッカー。日本には2010年に導入され、日本代表は2018年メキシコワールドカップで過去最高の10位を記録するなど、近年実力を伸ばしている。
【OFFICIAL SITE】http://j-afa.jp/https://www.elchecf.es/
紙芝居屋のガンチャン
日本でも数少ない、昔ながらの街頭紙芝居屋さん。イベント・お祭り・結婚式の２次会などで、関西を中心に活動。2011年、シアトル・ニューヨーク公演で大好評を得るなど、活躍の場を広げている。
【OFFICIAL SITE】https://kamishibaiya.com