部井久アダム勇樹、「もっと強くなれる確信」

ハンドボール日本代表の部井久アダム勇樹選手は、中央大学入学と同時に渡仏し、海外でプレーを磨いた。コロナ禍の影響で帰国した部井久選手は、ジークスター東京に所属し、日本ハンドボールリーグでもプレー。この夏に向けての想いを聞いた。

中学から始めたハンドボール

ハンドボール男子日本代表彗星JAPANは、今年1月下旬に開催された世界選手権で1997年以来となるメインラウンド進出を決め、32チーム中19位でフィニッシュ。優勝したデンマーク代表とも対戦するなど、貴重な経験を得た。ただ、部井久選手は、エジプト入り後のトレーニング中の怪我で試合には出場できなかった。現在、彗星JAPANは1988年のソウル以来となる大舞台を前に、第3回強化合宿を実施しており、怪我明けの部井久選手もメンバーに選出された。

今や日本を代表するハンドボーラーのひとりとなった部井久選手だが、小学生の時にはソフトボールをしており、ハンドボールを始めたのは中学生からになる。小学5年生時に、福岡県のタレント発掘事業に参加した少年は、ハンドボールやサッカー(ゴールキーパーとして)、レスリングや陸上の投てきなど7種目で最高評価を受けた。

「オリンピックへの想いが強くて、『種目は何でもいいから出たい』と憧れていたんです。当時、2012年のロンドンオリンピックから野球が正式種目から外れることになりました。それにハンドボール福岡県協会の方から、『絶対に日本代表に入れる』と言われ、何より1番楽しかったのがハンドボールだったんです」とプレーを始めた経緯を語る。

フランスでの成長と学び

「フル代表や海外の相手と戦うのは大学以降の話だと思っていました」という想定は覆り、 思っていたよりも早く訪れた。博多高校3年時に史上初めてとなる高校生での日本代表入りを果たすと、中央大学入学と同時に海外挑戦をスタート。フランスリーグのセッソン・レンヌ・メトロポールHBと契約した。

トップチームでの試合出場は多くはなかったが、異なる背景を持つチームメイトの中で経験を積み、フィジカルを含めた個の強化も行えた。「フランスでは個人が集まった上でひとつの集団になっていて、主張の強さも大事だと気付かされました。最初は言葉の問題もあり、自分の意見は持っていても言えなかったんです。その一方で、日本で培った真面目にトレーニングを続ける姿勢が生きました。やっぱり、できないと思われるのが悔しいので、僕は絶対に逃げ出しませんでした。愚直に取り組む日本人の良さが出たと思います」

さらに、ハンドボールにかける熱量も勉強になった。「フランスでは結果が出ないと生活に影響があるので、選手たちの背負うものが違う。日本が甘いわけではないですが、シビアな環境が互いに競争する意識を生み出し、プレーも激しかったですね」

さらなる成長への期待

「フランスはレベルがすごく高い。それを求めて行ったのですが、コロナ禍もあり、いろんな面で代表活動を優先するために日本に帰ってきました。フランスで学んだことに加えて、運動量が多くなるなど、日本に帰ってきて成長している部分を感じる」と昨夏から日本を拠点に活動することも前向きに語る。

全日本学生選手権(インカレ)が中止になるなど実践から遠ざかる危惧から、昨秋には大学に在学しながら日本ハンドボールリーグのジークスター東京でプレーすることに。2月は怪我のためプレーできなかったが、11月からリーグ戦で5試合(18得点/39シュート)、日本選手権で3試合(8得点/20シュート)に出場した。

横地康介監督は、「1番はやはりそのスケール。高さ、パワーとも日本人離れしてる。チームに合流してからの時間が短かったが、自分から積極的にコミュニケーションして、チームにすんなり溶け込んだ。ハンドボールの理解度はまだこれから。経験を積んで伸びていけば手のつけられない選手に。彼の成長は日本ハンドにとっても必要なこと」と部井久選手のこれからを語る。

もっと強くなれる確信

ジークスター東京は、昨シーズン4年連続11度目の日本一を飾った福岡ソフトバンクホークスも導入する、ライブリッツ社提供のチーム強化システムを採用。「ハンドボール×IT」を掲げ、IoTを積極的に活用している。部井久選手は、「練習時にも大きなスクリーンがあって、10秒前の映像がずっと流れています。すぐに自分のプレーを確認できて、すぐ振り返ることができる。頭に自分のプレーが残っている間に映像を見ることで、『じゃあ、次はこうしよう』ってすぐに修正ができる」とそのメリットを語る。

そんな部井久選手はヒュンメルのハンドボールシューズを着用。「今履いてるモデルは、底が厚くてクッション性とグリップが良いので、しっかりとフロアを捉える感じがあって、フェイントがまじ速くなりました」とその効果を力説する。

怪我のためにチームサポートだけで終わった1月の世界選手権は、「外から見ていて、自分ならもっとこういう風にできるんじゃないかとか、こうしたら上手くいきそうだなとか、自分とチームを客観視することで足りない部分や自信を持てる部分がはっきりし、もっと強くなれると確信できました」と振り返る。現在参加中の代表合宿は別メニューで調整中だが、次の合宿から合流するという。エジプトの世界選手権でつかんだもっと強くなれる確信が、世界に披露されるまであと数ヶ月。母国を舞台に活躍する部井久選手の姿が待ち遠しく思われた。


 

部井久アダム勇樹(Baig Adam Yuki)

中央大学、ジークスター東京所属。1999年4月21日生まれ、福岡県出身。博多高校3年時に日本代表でプレーした日本ハンドボール期待の新星。フランスでのプレーを経て、大きな成長を遂げた部井久選手は、2020年11月にジークスター東京に加入。

【ZEEKSTAR OFFICIAL SITE】https://www.zeekstar.tokyo/
【Baig OFFICIAL TWITTER】https://twitter.com/yukiadam0421

RELATED POST