上山友裕、「パラアーチェリーを盛り上げるために新たな挑戦を」

ヒュンメルは、日本身体障害者アーチェリー連盟とのオフィシャルサプライヤー契約を更新。新ユニフォームでプレーした国際大会を終え、ヒュンメルを展開する(株)エスエスケイを上山友裕選手が表敬訪問。大会と今後について話を聞きました。

アーチェリー専用ユニフォーム

ヒュンメルは、2020 年 9 月より、一般社団法人日本身体障害者アーチェリー連盟とオフィシャルウェアサプライヤー契約を締結しており、今夏の国際大会のユニフォームをサプライ。日の丸カラーをベースにした切り返しとラインデザインが特徴で、向上心を持ってトップを目指す選手たちをイメージ。脇から袖先にかけてのパターン(型紙)をスリムにしたアーチェリー専用ユニフォームです。

上山友裕(うえやまともひろ)選手は、「長袖シャツは袖部分が締まっているため、弦が当たるかもという無駄な心配もなくプレーできました。ズボンは、臀部から太腿裏にかけて、滑り止めのシリコンプリントがついていて、滑って体勢が徐々に変わることがなく、非常に助かりました」と感想を語ってくれました。

上山選手は、前回大会のリオで7位入賞。2020年度の世界ランキングが2位と、金メダル獲得が期待され、自らもそう宣言していた。出場したのは、一般的な弓であるリカーブのオープンの男子個人と重定知佳(しげさだちか)選手とコンビを組んだ混合の2種目。

70m先にある的を狙って矢を放つパラアーチェリー。的は直径122cmで、CDサイズとほぼ同じ直径12.2cmの中心円を射ると10点満点となる。ランキングラウンド(予選)では4分6本を1エンドとして、12エンド合計72本の矢を放ち合計得点を競い、順位を決める。決勝ラウンドは個人戦となり、3本5セットで、1セットごとの得点を競うルールに変わる。

1年半ぶりの国際大会に緊張

8月27日、大会初日。緊張で上手くペースがつかめないが、立て直して予選を11位で通過。「コロナ禍で国際大会が中止になって、1年半ぶりの実戦ということがマイナスに影響してしまった。上位8位には入っておきたいと思っていたし、楽しむだけだと思っていたのに、それが考えられなかったです」と悔しさをにじませる。

9月3日の決勝ラウンドでも本来の力が発揮できなかった。「僕の時だけ雨が降ってたんですけど、それにも気づかなかった。体もだいぶ冷えたと思うんですよね」と普段は無縁だった緊張から、この日も自分らしいプレーができずに1回戦で敗退した。

上山選手1回戦敗退のWEBニュースが配信されると、コメント欄には、『ビックマウスはダメだな』など、辛辣な意見も見られた。「やっぱり、そう書く人が出てくるとは思っていました」と振り返るが、インタビューではいつも通りの前向きな姿勢で対応。『しんどい時に、笑顔で応えてくれた上山選手はすごい選手』というキャスターのコメントが上山選手に力をくれた。

9月4日に行われた重定選手とのペアでは、個人戦の時よりはリラックスして臨めたものの、銀メダルを獲得したイタリアのペアに力及ばず、5位で涙をのむことになり、目標のメダルを手にすることはできなかった。

楽しみながら挑戦を

自国開催となった国際大会を終え、「将来のことを考える時期にきている」と上山選手は語る。「大会を通して、パラアーチェリーを広めたいと思ったし、『アーチェリーを知らなくっても、上山を知っている』というところからアーチェリーを知ってもらえるようにしたかった。大会終了後にたくさんの方から、アーチェリーは面白いというメッセージをもらい、一定の成功は収められたと思います。でも、LIVE中継は一部の競技に限られ、大きくは変えられなかったな、と思っています」とパラアーチェリーの認知度アップには時間がかかると実感した。

次のパリ大会まで3年。「マイナーなパラスポーツにとっては、これから厳しい現実が待ち受けています。様々なサポートを受けているパラアスリートはまだしも、スタッフは継続が大変。パラアーチェリーでも通常合宿が年4回、今大会に向けては、毎月ありました。それに国内外の大会があり、今までのサポート体制や支援が縮小されることになると、熱意だけでは続けられない問題になってきます」と課題を感じている。

そうした現実に対応するため、SNSでの発信や講演活動など、個人としてできることの模索を始めている上山選手。まずは、目標にした45年振りになる車椅子選手としてのアーチェリー全日本選手権リカーブ男子部門に出場。2022年2月にはドバイでパラアーチェリーの世界選手権がある。「僕らしく、楽しみを探しながら挑戦していきたい」と語る上山選手とパラアーチェリーのこれからが楽しみになりました。


パラアーチェリーについて

パラアーチェリーは、障がいの種類や程度に応じて、3つのクラスに分かれています。四肢の障がいがあり、車いすを使用する障がいが最も重度になるW1、対まひ(胸・越し髄損傷)などで車いすを使用するW2、上肢や下肢の障がいで、立位、もしくはいすに座って競技をする、最も軽度なSTの3つです。障がいの種類や程度に応じて、用具を工夫することも認められていることも特徴です。
【日本身体障害者アーチェリー連盟サイト】https://nisshinaren.jp/

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