スポーツの縁を繋ぐ、国連ユニタールによる平和講演

2021年夏のピースマッチでエキップメントパートナーを務めたヒュンメルは、7年目となったピースユニフォームの胸に国連訓練調査研究所(ユニタール)のロゴを配置。今回その縁を繋ぎ、2020年に学生たちとピースユニフォームをつくった広島文教大学附属高等学校で、講演会が実施されました。

平和都市広島の国連機関「国連ユニタール」

国連ユニタールは、1963年の設立以後、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた様々な研修を提供しており、2020年は開発途上国の人々を中心に30万人以上の能力開発にあたった。広島事務所は2003年に平和都市「広島」における初めての国連機関として設立され、イラクや南スーダンで社会起業家支援の研修を行う他、アフガニスタンではデジタル技術に関する研修などを実施しており、「平和とスポーツ」をテーマとする取り組みも行っている。

講演を務めたのは、国連ユニタールの島津準子さん。幼少期を冷戦時代の西ドイツで過ごし、東ドイツから西ドイツに亡命しようとする人を阻む電熱線や憲兵、慰霊碑を見て、戦争と平和を肌で感じたことが、アメリカと広島で学び、現在の仕事に繋がる原点となったという。

2021年末、広島文教高校の全校生徒500名を対象に、「Girls, Be Ambitious!」と題して行った講演は、授業でも学ぶことのあるSDGsや国連機関にまつわるクイズを出しながら、難しい議題を分かりやすく、考えやすいように紹介した。

男女平等が遅れる日本

「70億人が暮らす地球で、世界中の人が日本と同じ暮らしをすると、より多くの資源が必要となり、2.9個分の地球がいることに。そんな中で、すべての国の目標としてあるのが持続可能な開発目標」だとSDGsを紹介。

2030年までに世界のすべての国の目標となったSDGsの達成度で、日本は2021年のレポートで世界18位。特に島津さんが注目したのは、男女平等が遅れていること。「高校生の皆さんは、まだあまり感じていないかもしれませんが、国会議員や企業や組織のトップ層における女性の数はまだまだ少ないことや男女の賃金格差、育児や家事、介護などのアンペイドワーク(無報酬労働)を女性が担っていることが多い」と指摘。

世界に目を向けると、読み書きができない大人は、およそ7人に1人。7億7,300万人もおり、その3分の2が女性である(UNESCO Institute for Statistics)。SDGsの理念は、誰ひとり取り残さないこと。特別な配慮を必要とする人たちには、手厚いケアを行う公正なアプローチで社会の改善を図ることが求められている。

できるやり方で声を上げる

2015年、国連ユニタールは、アフガニスタンの女子代表サッカーチームを対象に、リーダーシップとコミュニケーション能力向上研修を実施し、文化交流として広島文教高校も参加していた。2021年に中東の情勢が大きく変化し、世界的に女性やマイノリティに対する懸念が表明されている。島津さんは、2013年に16歳でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの言葉、『人類の半分を占める女性が抑圧されていては、人類に成功は訪れない』を引用し、ジェンダーへの意識を改めてもつことを呼び掛けた。

講演を聞いた2年生の下前楓さんは、「文字が書けない女性が多いことに驚き、豊かさを守ろうということが心に残りました。子どもに関わる仕事に就きたいので、子どもたちに明るい未来を届けられるようになりたいです」と話し、同じく2年の三好香帆さんは、「8月6日が近づいてきたら、平和とSDGsを感じます。広島出身なので、多くの人に今の平和の良さを感じてもらいたい」と感想を教えてくれました。

「大事なのは、自分にできることを考えること。声を上げるのも、人前に立つだけじゃない。いろんな声の上げ方がある。自分たちのやり方で、できる範囲で」と話し、広島文教高校のサッカー部がつくったピースユニフォームを紹介。「コロナで、できないように思えることも、だからできることがあるとポジティブに考えてほしい。できることはたくさんあります。Girls, Be Ambitious!みなさんだからこそできる花を咲かせてください」と講演を締めくくった。


広島文教大学附属高等学校

広島県広島市安佐北区にある私立の高等学校。 第二次世界大戦後の混乱の時代に、日本再生のために「誠に徹した堅実な女性」の育成することを目的に武田ミキにより創設された。2019年に、広島文教女子大学の共学化により、広島文教大学附属高等学校と改称。逞しく生き抜くことができる、自立した女性を育成する。

http://www.h-bunkyo.ac.jp/highschool/

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