浅川隼人「社会をポジティブにするドリームプロジェクト」

2019年シーズン、前年に試合出場のなかった浅川隼人選手(当時、Y.S.C.C.横浜)は、開幕前に2桁得点を宣言し、チームメイトをざわつかせた。結果的に、それを上回るシーズン13得点で、チームの過去最高となるシーズン12勝、13位に貢献した。2020年シーズンは、同じJ3のロアッソ熊本に移籍。新型コロナウイルスのために、開幕戦の延期が発表された翌日、熊本県民総合運動公園を訪れ、話を聞いた。

Jリーガーであることが幸せをもたらす

浅川選手は、レンタルJリーガーという肩書きで知られ、昨シーズンは、子どものサッカー教室から人生相談や買い物まで、サッカー以外のことも含め、リクエストがあるところにはどこにでも出かけた。契約金が0円だったこともあり、Jリーガーという肩書きを生かした活動を考えていた。

契約金のあるプロサッカー選手となった今も、「サッカーで稼ぐ気はないんです」と平然と語る。「お金を払ってでもJリーガーになりたいくらい。趣味の延長線上で、好きなサッカーが仕事になった。年俸は自分を評価してくれるバロメーターではありますが、ずっと0円でもいい。Jリーガーであることが、僕に幸せをもたらしてくれるんで」と笑う。

初めての2部練習、天然芝のコートにクラブハウス、サッカー尽くしの生活。「これがプロなんだな」とロアッソ熊本に加入して何度も思った。「これだけの質と強度で時間をかけてサッカーをやっている。J3でここまでできるチームってそう多くない。だから、負けちゃいけないな、と思います。昨年までは、練習着やユニフォームは自分で洗っていた。でも、今はしなくていいし、スパイクを置いて帰ることもできる。環境が良くなったことをありがたいと思えるんです。でも、それが逆になると、なんだこの環境はって思ってしまう。同じことを経験するのに感謝を実感できないのはもったいないですよね。だから去年までの環境にも感謝でいられるんです」

得点で生きていく覚悟

1月19日、ロアッソ熊本のサポーターを前にした2020年シーズン新体制発表会で、得点王を目指すと話した浅川選手。「そうは言ってもまだ抽象的で、数値化できていないから逆算ができない。例えば、10得点でも得点王になれる可能性はあるので、昨年の記録である19点(原大智選手/FC東京 U-23)を上回る最低20ゴールを目指してやっていきたい」と語る。

藤本主税コーチは、「彼は、チャンスメイクなどのいいプレーで満足するのではなく、点を取ることを一番に考えている。得点で生きている選手であり、その覚悟がある。10点以上取ってほしい」と浅川選手を評価する。

「ロアッソには過去、得点王には誰もなっていないんです。そのために準備しているし、そのために熊本に来た。僕が得点王になれば、自然と勝ち星は増え、J2に復帰もできる。今までも、『サッカー選手になるなんて無理だ』って言われてきた。でも、応援してくれる人を味方に、声援をパワーに変えて結果を出してきた。チームが勝つために、いい意味でプレッシャーをかけて、笑ってシーズンを終えられるようにしたい」と前を向いた。

サポーターが選手にスパイクを提供

浅川隼人選手が、今シーズン着用するのは金色のヒュンメルスパイク『VORART PRO(ヴォラートプロ)』である。「紐をぎゅっと締めて、隙間をなくす感じでぴったりとスパイクを履くタイプの僕にとって、かかとのフィット感が高くて軽量のヴォラートは、スピードやグリップを生かしてくれるギア」だと語る。

そのスパイクは、ヒュンメルが提供しているわけでも、浅川選手が購入しているわけでもない。サポーターがヒュンメルにスパイクの代金を振り込んでいるという、今までにない取り組みである。サポーターは浅川選手が履く2足のスパイクを、定価(1足16,800円+税)より少し安く購入。そのうち1足に、好きな言葉や名前を入れることができる。ヒュンメルは文字を刺繍し、スタッドの加工を行い、浅川選手に届ける。浅川選手は、1ヶ月その2足のスパイクでプレーし、刺繍入りのスパイク(練習用)をサポーターに送る。それを3月から12月まで続け、10名のサポーターが20足のスパイクを提供する形に。

ヒュンメルはスパイクの利益などで、セブ島に人工芝グラウンドを建設するプロジェクトなど、浅川選手の進めている活動をサポートする。メーカー、選手、サポーターがそれぞれ満足し、さらに社会に向けてポジティブな取り組みを行うことができるこの企画は、浅川選手が行っている『HAYATO DREAM PROJECT』のひとつである。

ドリームパートナーが社会をポジティブに

「ファンの声援って、アスリートを勇気づけてくれるのですが、僕は去年レンタルJリーガーとして多くのサポーターに会ってきたので、ダイレクトで応援されることのプラスを実感しているんです。名前と顔が一致するサポーターがいることで、共に戦っている、より頑張ろうって思えるんです」とスパイクをサポーターに提供してもらうメリットを語る。

ヒュンメルのブランドミッションは、『Change the World Through Sport.(スポーツを通して世界を変える)』であり、浅川選手とはその理念や活動で共鳴する。「メーカーの根本を理解すると新しいことが掛け算でできると思っています。単純にお金だけではダメで、話を聞いてお断りしたこともあります。重要なのは、同じような夢を持つことで、持てないものを補い合う掛け算が生まれます。僕たちはドリームパートナーとしてお互いが協力して、新しい価値を生み出していくんです」

浅川隼人


1995年5月10日生まれ、千葉県出身。178cm/70kg。ジェフユナイテッド市原・千葉のアカデミー出身で、八千代高校、桐蔭横浜大学を経て、2018年J3リーグのY.S.C.C.横浜に入団。ルーキーイヤーは出場試合0ながら、練習試合で結果を残し、2019年シーズンに32試合13得点と飛躍。2020年シーズンは同じくJ3のロアッソ熊本に移籍。SNSを駆使し、社会へのアクションを起こすレンタルJリーガーとしても知られる。

浅川隼人オフィシャルサイト:https://hayatoa.official.ec
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