熊本女子ハンド「専門誌による決勝戦振り返り」

11月30日に熊本で開幕した女子ハンドボール世界選手権が、延べ31.5万の観客を迎え、12月15日に閉幕した。世界のトップ24ヶ国がしのぎを削った今大会は、オランダの初優勝で幕を閉じた。1次リーグとメインラウンドの振り返りレポートに続いて、ハンドボール界唯一の月刊専門情報誌『スポーツイベント・ハンドボール』に、決勝戦を中心にベスト4の戦いを振り返ってもらった。

(テキスト・写真:「スポーツイベント・ハンドボール」

東京五輪へ続く道は上位7チームに

11月30日に幕を開け、あっという間に12月15日の決勝戦を迎えた今大会。その前の13日に行なわれた5-6位決定戦(モンテネグロvsセルビア)、7-8位決定戦(スウェーデンvsドイツ)は、それぞれモンテネグロ、スウェーデンが勝利。5位モンテネグロ、6位セルビア、7位スウェーデンまでが来年の東京オリンピックに進むための世界最終予選出場権を獲得した一方で、8位となったドイツは、ここで「東京」への道を絶たれることとなった。

準決勝第1試合では、ここまで勝ち上がった4チームの中で最も下馬評が高かったロシアを、試合終了間際の得点で33-32としてオランダが勝利した。第2試合はノルウェーとスペインが対戦。前半を13-13と同点で折り返したあと、セットオフェンスでなかなか有効な攻め手を見つけられないノルウェーに対し、今大会、試合ごとに評価を高めていったスペインが徐々に点差をつけ、28-22で快勝。オランダは2大会ぶり2度目、そしてスペインは初の決勝進出となった。

オレンジプランが実り、オランダが初優勝!

迎えた大会最終日。まず行なわれた3位決定戦では、その強さをいかんなく発揮したロシアがノルウェーを破って3位に。満員の観客に囲まれた決勝戦は、スペインがいいスタートを切るものの、ここまで猛威をふるってきたオランダのセットオフェンスが機能し始めると、試合はオランダのペースに。さらにスペインがチャンスをつくっても、オランダのGKヴェスターが、ノーマークも含めて要所でファインセーブを連発。チームを勇気づけた。

それでも、後半9分に一度は16-21と5点差をつけられたところから、スペインも懸命に追い上げ、残り1分で29-29と同点に持ち込む。オランダのオフェンスをしのぎ、スペインが最後の攻撃を仕掛けるが、エース・カブラルのシュートはヴェスターがセーブ。残り時間は6秒。ここでヴェスターが出したスローをスペイン・エルナンデスが6mライン内(身体はライン外だったが、手が内側にあった)で妨害したとして失格となり、オランダに7mスローが与えられた(試合終了30秒前からは得点機を阻止するファールに対してこうした措置が適用される)。

オランダvsスペイン

これを大会得点王のアビンが冷静に決めて、オランダが初優勝。「オレンジプラン」と呼ばれる育成計画によって、近年は主要国際大会で準決勝以上の常連になりながら、どうしても金メダルには届かなかったオランダが、日本は熊本の地で、ついに悲願を成し遂げた。

熊本での世界選手権の次は広島での日本選手権へ

そして、IHF(国際ハンドボール連盟)のオフィシャルサプライヤーであり、PLAYER OF THE MATCH表彰などを通して大会をサポートしてきたヒュンメルにとっても、ユニフォームをサプライしているチームが優勝するといううれしい結末となった。

オランダのマヨネード監督は「初戦・スロベニア戦の敗戦はとてもショックだった。それを全員で乗り越えて、今日の試合まで勝ち進んできた。この‪1時‬間、全力を出し切って素晴らしい試合ができたと自負している。心から嬉しく、喜んでいる」と話し、大会を締めくくった。

大会期間中、幅広い年齢層の観客が観戦に訪れ、「まさしく世界レベル」というパワー、スピード、テクニックに歓声をあげていた。この熱気を、この後すぐに広島で開催され、おりひめJAPANの面々も出場する日本選手権・女子の部(12月24~28日)、そして、東京オリンピックへと繋げていけるかが、ハンドボール界にとって次の課題だ。

2019女子ハンドボール世界選手権大会


熊本県で2019年11月30日から12月15日の期間、開催される第24回世界女子ハンドボール選手権。2年に1回開催されるハンドボールの国際大会で、今大会の優勝チームには2020年に開催される東京オリンピックおよび次回大会の出場権が与えられる。日本を含む24ヶ国が出場。
【大会公式サイト】https://japanhandball2019.com/

スポーツイベント・ハンドボール


ハンドボール界唯一の月刊専門情報誌『スポーツイベント・ハンドボール』。女子ハンドボール世界選手権は、大会前からの密着取材を続け、ウェブサイトやツイッターで速報を配信している。専門誌ならではの解説や展開が見もの。
【オフィシャルサイト】 http://sportsevent.jp/

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