言葉でしか知らない『障がい者スポーツ』を体感

3月4日(土)、大学生を対象としたアンプティサッカー体験会が、東京都北区のキャプテン翼スタジアム東京北で行われ、30名が参加。障がい者スポーツに初めて触れた学生や理学療法士を目指す学生など、様々な学生が集まりました。


大学生に障がい者への正しい理解を広めるため

今回、アンプティサッカーの体験会イベントを企画したのは、文京学院大学でマーケティングを学ぶ新田都志子研究室の学生たち。6名の学生の共同テーマである『障がい者スポーツ』の楽しさ広め、障がい者への理解を促進するために、昨秋ボッチャとゴールボールの体験会を開催。今回3回目の障がい者スポーツ体験会となりました。

「元々、障がい者ってかわいそうなんじゃないかな、自分とは違うんじゃないかなっていうイメージがありました」と語るのは、主催者の一人で、文京学院大学3年生の中野拓人さん。「でも、そんな僕も、1年前に障がい者スポーツのひとつ『ブラインドサッカー』を体験をして、イメージが変わったんです。サッカー経験もあり、できると思っていたブラインドサッカーが、目隠しをすると、ボールがどこにあるのかさえ分からない。障がいの有無で、『できる、できない』は決まらないんだと実感しました」

同じく、主催者で同大学3年生の小早川遥さんは、「これから社会に出ていく大学生に、正しく障がいや障がい者について理解してもらうきっかけを作りたいと思いました。言葉でしか知らない障がい者スポーツを体感して、選手と交流してもらうことで、できないことだけではなく、障がい者の方ができることを正しく理解してもらうことが大事だと思っています。まずは、一緒にみんなで楽しみ、そして理解していくことで、この体験会が大学生の障がい者理解に繋がる一歩になれば」と、今回のイベントの目的を教えてくれました。


体一つでぶつかり合えるアンプティサッカー

日本アンプティサッカー協会の協力を得て、日本代表を含む9名の選手が体験会に参加。まず6グループに分かれて、トークセッションからスタート。学生の質問に対して、選手が答えていく形で、障がいやアンプティサッカーについて知ることから始めました。

アンプティサッカー日本代表として、ワールドカップにも3度出場した新井誠治選手は、2004年に悪性リンパ腫を発症し、左足を切断。「抗がん剤治療もきかなくって、さい帯血移植治療で奇跡的に生き延びることができた。人の血の力で僕は生きているんです。一命を取り留めましたが、5年後の生存率が20%といわれ、怖かった。でも、義足を作って、ようやく人前に出られるようになって、水泳とか義足アーチェリーとか色んなスポーツをやりました。柔道をやっていたこともあり、激しい対人スポーツがしたかったんですね。2010年に日本に導入されて出会ったのが、体一つでぶつかり合えるアンプティサッカーでした。障がいの重さの区別なく、一緒に戦えるのも面白さの一つで、アンプティのおかげで、人前で義足を外しても引け目を感じないようになりました」と学生に話しかけました。

トークセッションで、選手の人となりを知り、学生同士のコミュニケーションが進んだところで、クラッチを使って歩くことから。まず歩いて、走って、そしてボールを蹴る、という体験会が行われました。常に片足を上げておく必要があり、クラッチを足代わりにすることに戸惑う学生たちを、9名の選手たちが誘導し、ボールが蹴られるようになったところで、チーム対抗戦を行いました。


理解していく気持ちから

2ブロックに分かれてのリーグ戦では、なかなかゴールが生まれず、スコアレスドローの連続に。ドイツでのサッカー経験もある坪沼晃輝さんは、「どんなに経験があっても、クラッチを使うことで、全員が初心者になる。それが新鮮で本当に楽しかったです」と話したように、片足でプレーを続けることに慣れない時間が続きました。

順位決定戦に移ってからは、パスも繋がるようになり、高校までサッカーをやっていたという野村香花さんが1ゴール。「障がい者スポーツセンターでアルバイトをしているんですが、下肢切断の方と接する機会はあまりなくて、障がい者サッカーもしたことがなかったので、参加してみようかな、と思って。小学生からサッカーをやっていたのですが、片足が使えないことで、トラップや次の一歩をどうしたらいいのか、頭が回らなかったです」と笑った。決勝で2ゴールを決めた理学療法士を目指す鈴木真人さんは、「実習でへこんだ後だったので、アンプティの選手から元気と自信をもらえました。前向きに頑張ろうかなって」と、目を輝かせた。

新井選手は、「自ら手を挙げてきた学生たちだからか、楽しもう、吸収しようという意欲が感じられ、僕たち選手もハッピーな気分になれました」と話しました。そして、「僕たちみたいに、前に出ていく障がい者はマイノリティーなんです」と前置きした後、「人前に出られない、語りたくない身体障がいの人たちや、見た目ではすぐに分からない知的障がいの人たちが大勢います。学生の皆さんには、その人たちと目線を合わせて、理解していく気持ちを持ってほしいですね。そこからどうすれば、一緒に能力を引き出しあえるような社会になっていくのか、行動できるようになってくれれば」とメッセージを送りました。春風が少し冷たく感じられた昼下がり、クラッチのぶつかり合う音が、東京の空にこだまし、大学生の思いが共鳴しました。

アンプティサッカーとは

アンプティサッカーは、30年以上前、アメリカの負傷兵がリハビリテーションとして松葉杖をついてプレーしたのが起源と言われる障がい者スポーツ。アンプティとは、切断者を意味し、フィールドプレイヤーは主に片足の切断者で、日常生活で使われる松葉杖「クラッチ」をついてプレー。ゴールキーパーは、主に片腕を切断している。試合は、フィールドプレイヤー6名とGKの7名で、25分ハーフ、サッカーの3分の2ほど(40m×60m)のコートで行われます。

【OFFICIAL SITE】https://j-afa.jp/

文京学院大学について

1924年、創立者島田依史子が島田裁縫伝習所を文京区に開設。教育理念「自立と共生」を根源とする先進的な教育環境を整備し、現在は、東京都文京区、埼玉県ふじみ野市にキャンパスがあります。外国語学部、経営学部、人間学部、保健医療技術学部、大学院に約5,000人の学生が在籍。学問に加え、留学や資格取得、インターンシップなど学生の社会人基礎力を高める、多彩な教育を地域と連携しながら実践している総合大学です。

【OFFICIAL SITE】https://www.u-bunkyo.ac.jp/

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