佐藤寿人インタビュー:勝ちにつながるゴールを

2015年シーズンまで、J1リーグ最多ゴール記録は、ジュビロ磐田で活躍した中山雅史選手(アスルクラロ沼津)が2008年に記録した157ゴールだった。Jリーグがスタートした当時、小学6年生だった佐藤寿人選手は、23年の時を経て、少年時代の憧れだった三浦知良選手(横浜FC)をゴール数で追い抜き、2015年シーズン最終節で、中山選手の記録に並んだ。J1王者として迎えた2016年シーズン、佐藤寿人選手は、第2節名古屋戦でJ1リーグ最多となる158ゴールを記録した。

佐藤寿人
1982年3月12日生まれ 埼玉県出身
市原(現千葉)、C大阪、仙台を経て、2005年から広島でプレー。スペースへの飛び出しとシュートテクニックを武器に、チームを3度目の優勝に導いた。2016年シーズン第2節では、J1歴代最多となる158ゴール目を記録した。

3度目の優勝を飾った2015年シーズン

Jリーグ歴代1位タイとなる157ゴールを決めた2015年シーズン最終節。試合中では珍しい胴上げパフォーマンスでチームメイトから祝福された佐藤寿人選手だが、156ゴール目を決めたのは、8月29日の名古屋戦。実に7試合、3ヶ月近くゴールから遠ざかっていた。

しかし、これは記録へのプレッシャーというわけではなかったという。「ただ、チャンスのある試合が少なかったんですよね。メモリアルゴールを取らせたくないという気持ちも強かったと思います。チャンスをしっかりモノにできていなければ、対応しないといけませんが、自分で解決できないことに対してはいくら考えても仕方がない。自分で解決できることをしっかり考えていくことを常に思っているので。それに、自分が点を取っていなくてもチームは勝っていましたから、そういう部分に救われたところはありましたね。とにかく、チームが勝つためにできることをしようと思っていました」

昨シーズンから、Jリーグでは2ステージ制が復活し、年間王者を決めるJリーグチャンピオンシップが行われるようになった。1stステージを3位、2ndステージを1位としたサンフレッチェ広島は、年間総合順位も1位となった。勝ち点は過去10年でも最多となる74を記録したサンフレッチェ。優勝した2012年の勝ち点64、2013年の63から比べると、勝ち数も4増え、勝負強さが際立った。「勝たなければ一年が報われなくなるチャンピオンシップはストレスの強いものだった」と話したガンバ大阪とのチャンピオンシップ決勝は、アウェイで劇的な逆転勝利を収めると、ホームでも追いついてのドロー。2試合合計4-3で勝利し、この4年で3度目となるリーグ制覇を果たした。

勝ちにつながるゴールを

サンフレッチェの強さは選手層の厚さにある。「過去2回の優勝と比べても、選手全員で勝ち取った優勝だった」と語る佐藤寿人選手自身も、出場時間は限られている。昨シーズンの平均出場時間は64分。「もちろん選手としては90分出場したい思いはありますが、今シーズンも先発出場した時は、昨年からのチームでの役割もあり、60分くらいのプレーを思っています。良ければ長くなるでしょうし、チームとして上手くいかなかったり、パフォーマンスが悪ければ短くなるでしょうし。もちろん、プレー時間は僕が決めることではなく、監督やコーチングスタッフが決めることですが、90分間プレーしてた時にはしてなかったプレーもできるというか、しなきゃいけないって思っています」

その限られたれた時間の中で、前線からのディフェンス、また、時にはDFラインにまで戻ってプレーをし、昨年は12ゴール。12年連続2桁ゴールを記録した。2000年に市原でデビューした佐藤寿人選手は、今年でプロ17年目を迎える。2003年仙台でブレイクし、2005年に広島に移籍。積み重ねたゴールは、J1で158、J2で50(2016年3月12日現在)を数える。

158という数字についても、今まで目標にしていたわけでもない。「今までも目標として設定していたわけではないですし、これで終わりじゃないので。もう上には誰もいないというか、僕と嘉人(大久保嘉人選手/川崎フロンターレ)なので、一つ一つの積み重ねが、そういう記録になっていきますよね。まあ、先に嘉人にぱーと行ってもらおうかな、と思いますけど(笑)。でも、記録のためにやっているわけではないのですが、もちろんこの158っていうのは、カズさんとゴンさんがいて。158ゴールっていうのは、最多に意味があるわけではなく、その2人のレジェンドを超えるっていう数字だからこそ大きな意味があるんだと思っています。今までもそうなんですけど、勝ちにつながるゴールを決めることができるかにこだわって、毎試合プレーしたいと思っています」

サッカー選手にとって、自分で選択できるアイテムはスパイクだけである。佐藤寿人選手は、サンフレッチェ広島に移籍したシーズンからヒュンメルのスパイクを着用している。「サッカー選手として大事なのは、ボールフィーリングですね。つまり、蹴った時の感覚です。自分の感覚と靴を履いて蹴った時の感覚のズレが小さければ小さいほうがいい。蹴る時もそうだし、トラップする時もそう。あと、僕はストライカーなので、長い距離を走るというよりは、短い距離でたくさんの方向転換があります。そういう意味では、足馴染みがよい上で、伸びすぎない、耐久性のあることが重要ですね」

佐藤寿人選手は、身長170cm。FWとしては小柄で、スピードやテクニックが頭抜けているわけでもないが、常に課題を探し、どうプレーしていけばチームの中で自分が生きるのか、相手が嫌がるのかを考え続け、FWとして最高の結果「ゴール」を量産してきた。そして、彼が大事にしているのは、「チームの優勝は、個人で結果を出すことの比ではない」ということ。「ACLとリーグ戦を並行して戦う難しさ」がある今シーズン、ヴィオラのエースが4つ目の星を狙う。

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