"Change the World Through Sport."(スポーツを通して世界を変える)をミッションに掲げ、アフガニスタンやシエラレオネのサポートを行ってきたヒュンメル。日本ではスポットでの活動しかできていませんでしたが、今後、サッカーを軸に、インターナショナルと連動した活動を幅広く展開していきます。第一弾として、病気や事故で手足を切断した選手がプレーするアンプティサッカーで、クラブチーム「関西セッチエストレーラス」のサポートをスタートします。

関西セッチエストレーラスは、大阪、兵庫、三重など関西地方の選手が中心となって2012年に結成されたアンプティサッカーチーム。Sete Estrelasはポルトガル語で「7つ星」を意味。ピッチでプレーする7人の選手が、星のように輝き、勝ち星を上げられるように、という願いが込められています。2012年ロシアワールドカップで日本代表キャプテンを務めた川合裕人がチームを束ね、理学療法士や作業療法士、義肢装具士など多くの医療従事者がボランティアスタッフとしてサポート。日本アンプティサッカー界随一の結束力を誇ります。
【OFFICIAL SITE】http://www.sete-estrelas.com

アンプティサッカーとは

アンプティサッカーは、ヒュンメルがシエラレオネでもサポートしている競技で、30年以上前にアメリカの負傷兵がリハビリテーションとして始めた松葉杖サッカーが起源。フィールドプレイヤーは主に片足の切断者。日常生活で使用するクラッチと呼ばれる松葉杖をついてプレー。特別な機器がいらないため、海外では障がい者スポーツとして急速に人気が高まっています。また、ゴールキーパーは主に片手を切断しており、片手でプレーします。日本には2010年に導入され、日本代表は2年に1度開催されるアンプティサッカーワールドカップに2010年アルゼンチン、2012年ロシアと出場。11月末から開催されるメキシコ大会にも出場が決まっています。

日本選手権大会1stラウンド

ヒュンメルがこの10月よりサポートをスタートしたのは、2012年に結成されたアンプティサッカーチーム「関西セッチエストレーラス」。第4回日本アンプティサッカー選手権大会1stラウンド西日本地区では、アフィーレ広島AFCとFC九州バイラオールと戦いました。

第一試合の広島戦がアンプティサッカー初ゲームとなった中学3年生の川西健太君が3ゴールを挙げ、関西が4-0で勝利。少年は病気で骨盤を切除。両足の長さに左右差ができ、股関節の自由がきかなくなったために、松葉杖での生活を余儀なくされています。サッカーができなくなって落ち込んでいた時に出会えたアンプティサッカーに「希望の光が見えた」と語った健太君。サッカー部の引退試合ではラスト3分交代出場したものの、杖なしでは動くことができず、ただ立ち尽くし、ただただ泣くことしかできなかったと言います。そんな引退試合後初めてとなる試合には、サッカー部時代のチームメートが大勢詰めかけ、病院でお世話になったという看護士が声援を送りました。その中でのハットトリック達成。歓声に応えるようにクラッチを高く上げた健太君の、はにかんだ笑顔が印象的でした。

日本選手権大会ファイナルラウンド

九州には0-3で敗れたものの、西日本2位でファイナルラウンドを迎えた関西セッチエストレーラスは、10月12日、神奈川県川崎市のフロンタウンさぎぬまで開催されたファイナルラウンドで、東日本1位のFCアウボラーダ川崎と対戦。日本にアンプティサッカーを普及させるきっかけを作った元ブラジル代表のエンヒッキ・松茂良・ジアスが率いる川崎を相手に、関西は一進一退の攻防を見せましたが、互いに譲らないままスコアレスドロー。PK戦では、関西のペナルティキックが2本ストップされ、2-4。関西は準決勝で敗退となりました。

3位決定戦は、関西vs北海道。日本代表にも名前を連ねるエースの冨岡忠幸が激しい当たりで前線からプレスをかけ、鎌田義弘からパスを受けた健太君のシュートはGKがナイスセーブ。前半21分、そのコーナーキックから健太君が先制ゴールを決めました。

ハーフタイム、スタッフがうつぶせになった健太君のマッサージを始める。他の選手と違い両足がある分、逆にハンデとなってしまうことも。少しだけ短くなった右足は、フィールドについてしまうとペナルティとなるため、常に意識して片足を上げておく必要があります。1stラウンドでの2試合が体力的にきつかったこともあり、この日は疲労軽減を目的に、右足は上履きを履いてシューズの軽量化を図った。それでも1年以上続いた入院生活で落ちてしまった体力の影響がまだあるのだろう。さらに片足で全てのプレーをするため、疲労は集中する。

後半が開始したが、マッサージは終わらない。フットサルのように選手交代の出入りは何度でもできるアンプティサッカーだが、出番はもう来ないのかと思われた。しかし、立ち上がった健太君は再びピッチへ。後半9分キックインのボールをダイレクトシュートし、この日2点目を決める。「川合さんとコーナーキックの話を試合途中でしてて。それがうまくできたゴールで、嬉しかったです」。試合は北海道が1点を返したが、その2分後、48才ながら衰えない気迫を見せる川合裕人がゴールを決め3-1。そのまま関西が勝利し、3位となった。

アンプティサッカーのエンパワーメント

決勝戦は川崎が延長戦の末、九州に競り勝ち優勝を飾った。閉会式では各チームが健闘をたたえ合い、笑顔が溢れた。川西健太君は疲労感を忘れて言った。「ずっとサッカーをやってて、病気でできなくなったけど、今、アンプティサッカーに出会うことができた。それがすごい嬉しいです。次は優勝を狙いたいですね」。

理学療法士で、関西セッチエストレーラスのトレーナーを務める白井苗は言う。「3位決定戦、健太は後半プレーできないかと思ったけど、マッサージをすることで、もう一回試合に復帰できた。少しでもいいコンディションでプレーしてもらえるようにと私たちは思っています。職業柄、エンパワーメントって言うことがあるんです。人を前向きな気持ちにさせ、人が本来持っている素晴らしい生きる力を湧き出させることなんですけど、私はこのチームでそれを感じているし、私もそうありたいな、と思っています」

病気や事故で手足を失った選手がプレーするアンプティサッカー。選手はアンプティサッカーと出会い、人生が前向きに変わっていった体験をそれぞれにしています。それを支える日本アンプティサッカー協会のメンバーも各チームのスタッフも、この競技が持つ「もう一度人生を前向きに引き寄せる力」に魅せられている。それはヒュンメルが"Change the World Through Sport."と掲げ、失われた可能性をサポートしていることに通じています。関西セッチエストレーラスのサポートを日本での活動のスタートとし、ヒュンメルは今後更にスポーツを通して世界を変えていく活動を広げていきます。