FUNKIST 染谷西郷
音楽で世界を変える
@Nagasaki, Japan 9th Aug, 2018

V・ファーレン長崎のサポーターソング『V-ROAD』を歌う「FUNKIST」のボーカル染谷西郷さんは、20才の頃より毎夏沖縄や広島、長崎を訪れている。今年は、6月23日、沖縄慰霊の日に糸満市摩文仁の平和祈念公園を訪れ、8月6日は広島で、8月9日には長崎でピーストーク&ライブを行った。8月9日、長崎原爆の日に、ライブ前の染谷西郷さんに話を聞いた。

V-ROAD

V・ファーレン長崎のサポーターソング『V-ROAD』を歌う「FUNKIST」の染谷西郷さんは、「長崎出身のアーティストがたくさんいる中で、僕らでいいのかな、という気持ちもありながら、すごく嬉しいことでした」と話す。「長崎には20代の頃からずっと通い、8月9日には、被爆体験を若い世代に語り継ぐ、語り部の方たちに話を聞いてきました。長崎は、音楽で何を伝えていくのかを教えてくれ、メッセージの軸ができた場所。生まれ育った街ではないけれど、僕らの歌を応援に使っていただけることをとても光栄に思っています」

昨年、V・ファーレン長崎は、8月末から最終節まで13試合負けなしと驚異的な結果で初のJ1昇格を決めた。2017年8月11日、平和祈念ユニフォーム着用マッチのイベントとして、FUNKISTはスタジアムライブを実施、『V-ROAD』を熱唱した。「サッカーができる、サッカーの応援ができる喜びをいつも以上に感じ、サポーターのみなさんと分かち合える喜びを感じながら、演奏させてもらいました」と振り返る。

「『V-ROAD』は、希望にあふれた曲。4年前に作って、もっといい言葉がないかと歌詞を変えてきました。長崎の他にも、震災後の宮城県気仙沼市で見聞きした体験も重なり、苦境を乗り越えた場所だからこそ、希望にあふれた曲にしたいという思いがありました。原爆という悲しみはあるんだけど、それを乗り越えてサッカーをする、応援をする喜び。みんなが笑って、泣いて。圧倒的なチャンスや勢いを感じられるような曲に、サポーターの皆さんが育ててくれました」

日本と南アフリカをルーツに

染谷さんの父は、フラメンコギタリストで日本人、母はバレエダンサーで南アフリカ人と、染谷さん自身はハーフである。染谷さんが中学3年生になるまで、南アフリカでは、白人と非白人を分離、隔離するアパルトヘイトという政策が行われていた。「肌の色が違う人とは結婚なんてできなかった時代に、僕の両親は、国のルールを破って結婚して、僕を生んでくれた。ただ、僕自身は、日本で育った日本人だと思っていたのに、『ガイジン』という言葉で遮られ、自分の居場所が見つからなかった」とルーツについて教えてくれた。

そんな染谷さんが、長崎や広島の歴史について学ぼうと思ったのは、19歳のひとり旅でのことだった。「初めて南アフリカにひとりで行って、今まで訪れたことのない黒人居住区に行きました。それまで、南アフリカは、ヨーロッパと変わらない普通の都会だと思っていたのですが、フェンスの向こう側は電気やガスも通っていませんでした。その違いと共に、今まで自分が見て見ないふりをしていたことにもショックを受けました。その後、『旅を続けて、オレに何ができるかを探そう』と思って、ヨーロッパへ行ったんです」

旅先で出会ったドイツ人と話し合った染谷さんは、『オレはアウシュヴィッツを二度と繰り返さないため、その国の良さを知るために、旅をしている。サイゴウは、広島や長崎のことをどう考えているんだ』と聞かれ、答えに窮したという。「恥ずかしながら、オレ、東京出身だしって思ったんですよね。彼はドイツの歴史を語ってくれたのに、自分は、日本については何も話せなかった。それで、帰国後、平和資料館に行って、語り部の方に話を聞かせてもらいました」

8月のピースライブ

10代だった若者は、2001年、小学校からの同級生である宮田泰治らとFUNKISTを結成。この10年以上にわたり、8月には広島や長崎でピースライブを開催している。今年も8月5日と6日に広島で、8月9日には長崎で、被爆者の語り部の方とともに、ピーストーク&ライブを行った。

「これが、使命感や義務感から始めたことだとしんどかったと思うのですが、初動が『知らないって恥ずかしい』っていうことだったので」と話す。FUKISTは、南アフリカはもとより、ヨーロッパやアメリカ、中国など世界各国で、国境や人種の壁を超えたライブをしており、8月に行う広島や長崎でのピースライブが、「世界でライブをしていく準備になり、初心に戻ることができる機会になっている」と語る。

「8月6日や9日に、過去を振り返って、悲しい気持ちになり、考えることや感じることはすごく大事。でも、こうやって大声を出して、歌うことのできる、笑い合える今日があるっていうことを思いっきり感じて、こんなに笑える今になったよって空に放つことが大事だと思うんです」

音楽で世界を変える

ヒュンメルのブランドミッションは、“Change the World Through Sport.”(スポーツを通して世界を変える)。シエラレオネやアフガニスタンとともに、V・ファーレン長崎との平和祈念ユニフォームもその取り組みのひとつである。染谷さんの今年のピーストーク&ライブには、「音楽で世界は変えられるのだろうか?」という副題がついた。

「音楽で世界を変えられると思っています」と力強く語る染谷さんは、反アパルトヘイト活動を行った南アフリカの歌手で、グラミー賞も受賞したミリアム・マケバを例にしながら教えてくれた。「今回のライブひとつとってみても、音楽で交わるはずじゃなかった人たちが同じ場所でひとつになれる。そんな小さなところから、音楽の可能性が広がっていく。それはサッカーも同じですよね」

失業率や貧困率の上昇は、犯罪率の上昇に関係するといわれている。そこで、FUNKISTは、音楽の楽しさや希望が、未来の仕事に繋がるようにと願いを込めた活動をしている。ライブチケットの代金の内200円をプールし、それで楽器を届け、音楽を教えてくれる先生も手配している。

「サッカーや音楽でひとつになれる。それが、子どもたちの未来となり、希望になる。そこには、それで食べていける仕事になる可能性があるか、ということも重要な意味を持つことを南アフリカで実感していて、FUNKISTでは、南アフリカに楽器を届けに行っています。音楽が好きになってくれて、それが仕事になってくれたらいいな、と」

長崎のピーストーク&ライブは、『愛のうた』で幕を閉じた。「涙流れるこの世界は 争いあわなきゃ 誰も愛さえ描けないのか? 言葉や色のもっと先で 繋がってるなにかを 教えてくれ音色」(FUNKIST,2010)

FUNKIST

FUNKIST(ファンキスト)は、小学校からの同級生のボーカル染谷西郷とギター宮田泰治らが2001年に結成。国内はもちろん、南アフリカやヨーロッパなど、海外も含め年間100本を超えるライブで世界を駆け回る。ビートフルな音楽に、染み入るリリックとメロディーが混ざり合って生まれる楽曲が、ジャンルの壁を超える。2018年春には、二人目のジャイアンとタッグを組み、スプリットミニアルバム『TOP OF THE WORLD』を発表。
【OFFICIAL SITE】https://funkist.info/