小学生もプレー。アンプティサッカーの新たな取り組み。

病気や事故で手足を切断した選手が松葉杖をついてプレーするアンプティサッカーの全国大会が5/9(土)から5/10(日)にかけて大阪で開催された。昨年末にメキシコで開催されたアンプティサッカーワールドカップ以降初の公式戦となる「第二回レオピン杯Copa Amputee」には全国から6チーム50名が集結。初日には初めてとなるオールスターゲームを実施した。



3つの側面を持ったレオピン杯

アンプティサッカーの公式戦は10月開催の日本選手権と、この5月開催のレオピン杯の2大会。チームや選手もまだ少なく、なかなか試合ができない状況にある。それでも2年毎に開催されるワールドカップに3度出場し、2014年メキシコ大会では決勝トーナメントに出場。実力のアップと合わせて、各チームが地域で地道な講演活動や体験会などの普及活動を実施するなど、選手も増加してきていた。

今回のレオピン杯では、アンプティサッカーを始めたものの、なかなか試合出場の機会がない選手にプレー機会を持ってもらおうと東西戦を実施。さらに、日本代表クラスを集めた日本最高峰の戦いが見られたオールスターゲームを開催。選手の育成、競技の魅力発信、そして勝負にこだわる全国大会という3つの側面を持った大会になりました。

3名の小学生がプレーした東西戦

東西戦には、小学生低学年の子どもたちが3名同時にプレー。いずれも前線に張り、パスを待った。最後尾から大きな声で指示を出した金井隆義選手(AFC BumbleBee 千葉)はこう語る。「子どもたちに何とか一点取らしてやりたかったんですよね。実際、試合に出ても大人とプレーするので、ボールにはなかなか触れないんですが、今回は東西戦。全選手が出られるエキジビションマッチということで、3人の子どもを主役にしてあげたかった」。相手チームからは「子どもだからといって花を持たせてあげるわけにはいかない」と厳しくボールを奪われたが、ピッチに響く大きな声でチームを鼓舞する金井選手の声が子どもたちに届き、ゴール前の混戦から一点が決まる。

FCアウボラーダ川崎で小学三年生の息子さんがプレーするお母さんは「ケガしてからすぐにアンプティサッカーを知って。なかなか試合には出られないですし、こういう機会に同じ小学生の子ども達とプレーできてよかったです」と声援を送った。子どもたちも「楽しかった。またプレーしたい」と笑顔を溢れさせた。



(左)東軍キャンプテン:エンヒッキ・松茂良・ジアス選手
(右)西軍キャンプテン:川合裕人選手


オールスター戦

オールスター戦は両軍のキャプテンが事前に話したように、レベルの高い戦いを見ることができた。ドリブル、フェイント、パスなど、同じ会場でサッカー大会を終えた高校生も、その質の高さに息を飲んでゲームを見守った。日本にアンプティサッカーを普及させるきっかけを作った元ブラジル代表のエンヒッキ・松茂良・ジアス選手(FCアウボラーダ川崎)は、「シュートの精度が低くて、調子も乗りませんでしたが、明日に向けていいゲームになったかな、と思います」と話し、「ヒッキとの対戦はやっぱり楽しいですね。オールスター戦ながらちょっとスイッチ入りました」と語ったのは、昨年10月の日本選手権決勝戦を戦ったFC九州バイラオールのエース星川誠選手。

いずれも日本代表で戦ったライバルが同じチームに集結し、ワールドカップ決勝トーナメント進出までレベルを上げた日本アンプティサッカーの実力を見せてくれた。西軍キャプテンで関西セッチエストレーラスの川合裕人選手は、こうまとめてくれた。「いつもとは違うメンバーですが、もともと代表で勝手知ったるメンバー。どういうプレーをするか分かっていたし、分かってくれてるし、やりやすかったですね。気持ちよくサッカーを楽しめました。今回のレオピン杯は、2日間の開催となり、東西戦、オールスター戦も初めて実施できました。子どもたちも含めて、次に繋がる経験をみんながしてくれたんじゃないかな、と思います」。

まだまだ競技として若い日本アンプティサッカー。協会も選手も、大会やゲームをこなすごとに経験値が積まれていく様が見て取れる。今回、選手の体調を考慮しての2日間開催、全選手のレベルを上げる東西戦、選手の目標のひとつとなるべきオールスターゲームという初の試みが、日本アンプティサッカーを刺激し、さらなる成長へ導いてくれるに違いない。

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