プロブレイン:クラフトマンレポート

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革と会話しながら作り上げる。
SSKグラブの最高峰シリーズ「Probrain」。

革は生き物である。グラブ製作中でも伸びていくほどに、革は生きている。もちろん、完成したグラブがスポーツ店の棚に並んでいる間も同様だ。だからこそ、その特性を知り、特徴を生かす作り方をする必要がある。SSKグラブの最高峰シリーズ「Probrain(プロブレイン)」を手掛けるのは、そうした革を熟知したマイスターである。プロブレインは、主に硬式野球部の高校・大学生に支持されている。大きな特徴はその革の張り。工芸品的とも言われている仕上がりには、実は選手のプレーを考えた職人のこだわりが反映されていた。小雨降る冬の昼下がり、東京の下町にあるプロブレインの工場の一つに職人を訪ねた。

こだわりの原体験。

小さな工場では、数名の職人がそれぞれの工程を粛々と進めていた。見慣れない道具がいくつもあり、それらは全て特注のものだという。自らのこだわりを実現するためには、規格品では対応しきれないからだ。こだわりはもちろん、自分たちの仕事へのプライドもあるが、何よりも、より良いプレーができる手助けとなる道具を作り出すためである。かつて、商品の納品が一日遅れていた時に、「仕上げが気に入らないので、悪いけれどもう一日待って欲しい」とSSK担当者に頼み込んだというエピソードがそれを物語ってくれる。

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職人が初めて試合に出た小学生の時、友達にかりたグラブの紐が切れてしまう。グラブの不具合で上手くプレーできなかった少年にとって、その体験がグラブ職人を目指す原体験となる。彼は完璧なグラブで試合に集中できるように、行動を移す。スポーツショップでグラブ紐を購入し、アイスピックで穴を開け、ヘアピンで紐通しを行うようになる。小学生の時には既に自分で組み立てができるようになり、高校時代には、チームメイトのグラブを修理するまでになった。日本にもグラブ職人が数いれど、小学生の頃からグラブ職人を目指していたのは、彼くらいかもしれない。

手間暇を惜しまない工程。

こだわりはグラブの紐通しひとつを見ていても明らかだった。グラブ紐で革を結合させる工程は、複数の革を一体化させたり、耐久性を持たせたりするために行われる。グラブを製作している短い過程でも革は伸びるために、グラブ本体を縫い合わせる前には片側にだけ穴を開けておき、もう片側は紐通しの直前に開けるようにしている。この穴開け、実は機械で革を裁断する時に一緒に済ませてしまうのが現在の主流である。しかし、職人は手作業で革を裁断し、穴開けも一つひとつ行う。その分工程も多くなるし時間もかかるが、結果的に紐通しにおいて紐がスムーズに通り、無駄な力を使わずに済むようになる。手にストレスをかけないことはグラブにストレスをかけないことにもつながる。つまり、余計な毛羽立ちや不必要なシワ、不自然な膨らみが丁寧な工程によって抑えられることになる。革の余分なたるみは型崩れの原因であり、革の伸びが助長されるきっかけとなる。グラブは使っている間に、その人の型になってくる。使い込んでいった時に型が崩れないグラブ。時間をかけて、革と会話しながら丁寧に仕上げていく理由はここにある。

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繊細に革を見つめる手指。

取材の終わりに、職人に手を見せてもらった。使い込まれて節くれだった手を想像していたのだが、職人の手は、内側にいくつか小さな豆が見られる程度で、細長くキレイだった。驚いていると「無駄な力を入れないので」とのこと。それは前述したようにグラブに負荷をかけないため、力任せの作業をしていないからであり、さらにはグラブを作る上で最も大事にする工程を「革の裁断」と職人が考えているからである。革には繊維方向があり、その密度や絡み具合によって、強度や耐久性、厚さが異なってくる。革の表面についた細かな傷のチェックも含め、こうした違いを手指で感じ、伸ばすべき部分、耐久性が重要視される部分とパーツ毎に必要な革の部位を見極めている。その手は、誰よりも繊細に革を見つめている。職人は常に選手の動きを想像しながらグラブを完成させる。妥協することなく職人が作り上げたグラブを選手が手にし、時間をかけて自分の型に作り上げた時、そのグラブは命を吹き込まれたように躍動を始めるだろう。

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